鎖骨骨折による後遺障害
鎖骨骨折と後遺障害
交通事故によって鎖骨を骨折して、通院治療を続けたけれども、変形が残ってしまう、肩の動きが悪くなってしまう、痛みが残ってしまう、ということは少なくありません。
このような後遺症が残ってしまった場合、自賠責保険から後遺障害と認定される可能性があります。
以下、変形が残った場合、肩関節の機能障害が残った場合、疼痛が残った場合に分けて、どのような後遺障害が認定され得るのかご説明します。
変形が残った場合
「鎖骨に著しい変形を残すもの」に該当する場合には、後遺障害等級12級5号が認定されます。
「著しい変形」とは、裸体になったときに、変形や欠損が明らかに分かる程度のものをいいます。
労働能力喪失率表によれば、12級の場合の労働能力喪失率は14パーセントとされています。
しかし、相手方保険会社は、「鎖骨に変形が残っても、仕事に大きな支障は出ないから、労働能力喪失率は低くすべき」などと主張してくることがあります。
裁判例の中には、左鎖骨の変形で12級5号が認定された事案において、9パーセントの労働能力喪失率しか認めなかったものもあります(静岡地判平成18年1月18日、自保ジャーナル1632号17頁)。
もっとも、右鎖骨の変形障害(12級5号)が認定された事案において、67歳まで14パーセントの労働能力喪失率を認めた裁判例もあります(大阪地判平成30年4月27日、自保ジャーナル2026号135頁)。
結局、仕事に支障が生じたことがどこまで主張、立証できるかどうかがポイントとなります。
肩関節の機能障害が残った場合
肩関節の機能障害を原因とする後遺障害は、軽い順に、12級6号、10級10号、8級6号があります。
機能障害を原因とする後遺障害が認定された場合、相手方保険会社が可動域制限の測定値がおかしいと主張して、その等級の妥当性を争ってくることがあります。
裁判例の中には、自賠責保険で右肩関節の機能障害として12級6号が認定されたけれども、鑑定の結果、機能障害は認められないと判断したものがあります(東京地判平成13年5月29日、交民34巻3号648頁)。
可動域は医師が患者の肩を動かして測定しますが、どの程度まで力を加えて限界を調べるかは個々の医師の判断になるので、測定結果が変動することがあります。
測定結果が変動したとしても、それが不自然ではないと具体的に主張、立証できるかがポイントとなります。
疼痛が残った場合
鎖骨に疼痛が残った場合には、軽い順に、14級9号、12級13号が認定される可能性があります。
一般的に、疼痛は時間の経過により緩和すると考えられているため、疼痛を原因とする後遺障害が認定された場合には、労働能力喪失期間が争いになることがあります。
裁判例では、14級9号の場合は5年、12級13号の場合には10年程度と認定することが多いです。
疼痛による仕事への支障、減収がどれだけ多いのかを具体的に主張、立証できるかどうかがポイントとなります。
弁護士法人心に相談
鎖骨を骨折した場合には、様々な点が問題となる可能性があります。
ご自身で相手方保険会社と交渉してくことは難しいかと思いますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
当法人には、交通事故に強い弁護士が多数在籍しておりますので、お困りの方は、お気軽にお問合せください。