公務員の逸失利益
公務員に逸失利益は認められるのか
交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合、仕事に大きな支障が出て、収入が減少してしまうことが多いです。
事故に遭わなければ得られてはずの収入を補償するものを、逸失利益といいます。
後遺障害によって収入が減少してしまった場合、通常、逸失利益が相手方保険会社から支払われます。
しかし、公務員の場合、民間企業の従業員と比べると、身分保障が手厚いことから、後遺障害が残っても収入が減少しないことが少なくありません。
そのため、相手方保険会社が「収入の減少がない以上、逸失利益は発生しない」と主張して、逸失利益の有無が争いになることが多いです。
裁判所の考え方
最高裁は、減収がない場合、「特段の事情のない限り」、逸失利益は認めないと判示しています(最判昭和56年12月22日、民集35巻9号1350頁)。
この最高裁の判例を踏まえて、下級審では、①昇進・昇級等における不利益、②業務への支障、③退職・転職の可能性、④勤務先の規模・存続可能性等、⑤本人の努力、⑥勤務先の配慮等、⑦生活上の支障といった要素を考慮して、「特段の事情」の有無を判断する傾向にあります。
具体的な裁判例
⑴ 看守が頚部、腰部につき後遺障害等級併合14級が認定されたという事案において、事故後も通常業務をこなしており、休業もしていないこと、昇進・昇級への影響が不明確であること、事故後も給料面で不利益な取り扱いを受けていないことから、逸失利益を否定しました(京都地判平成25年7月25日、自保ジャーナル1911号112頁)。
⑵ 国家公務員が左膝疼痛等につき後遺障害等級12級13号が認定されたという事案において、事故後復職して減収はないけれども、工事監督のための外回りの業務や立ち仕事等に少なからず支障が生じていることから、10%の労働能力喪失率を認め、また将来民間企業に転職することが予想されることから、定年である60歳ではなく67歳までの19年間の労働能力喪失期間を肯定しました(東京地判平成23年9月20日、自保ジャーナル1860号107頁)。
⑶ 地方公務員が高次脳機能障害、左片麻痺につき後遺障害等級別表1の2第1級が認定されたという事案において、復職して上司や同僚の配慮を受けて重大な支障は生じていないけれども、残業代を得ていないこと、現在の勤務先を退職すれば再就職の可能性は低いこと等を理由に、事故前の年収637万円を基礎に67歳まで60%の労働能力喪失率を肯定しました(熊本地判平成25年3月6日、自保ジャーナル1903号1頁)。
弁護士法人心に相談
減収がない公務員の場合には、「特段の事情」があることをどこまで説得的に主張、立証できるか否かが大きなポイントとなります。
特段の事情が存在することの証明は、ご自身では難しいかと思いますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
当法人には、交通事故に強い弁護士が多数在籍しております。
交通事故のご相談は無料で対応しておりますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。