麻痺による後遺障害
麻痺の影響
交通事故による後遺症として麻痺が残ってしまった場合,生活,仕事に大きな影響が出てしまいます。
麻痺の程度によっては,寝たきりになってしまうこともあります。
今後の生活,仕事への不安を少しでも軽減するためには,自賠責保険から適切な後遺障害認定を受け,相手方保険会社から適切な賠償金を受け取ることが必要です。
そのために必要な情報を,以下,ご説明いたします。
麻痺の原因
麻痺の原因としては,大きく分けて①脊髄損傷,②外傷性脳損傷の2つがあります。
①脊髄損傷による麻痺は,背骨の中にある脳と末梢神経との信号を伝達する中枢神経が傷つき,脳から抹消神経への信号が阻害されることによって生じます。
例えば,交通事故の衝撃により,背骨や首の骨が折れることで,中枢神経が傷つき,麻痺が生じることがあります。
②外傷性脳損傷による麻痺は,主に随意運動を制御している前頭葉の後部等が損傷を受けることにより生じます。
例えば,交通事故によって頭部に強い衝撃が加わり,脳が損傷することによって,麻痺が生じることがあります。
麻痺の種類
麻痺は,それが生じた部位により,①四肢麻痺,②片麻痺,③対麻痺,④単麻痺に分類されます。
①四肢麻痺とは,両方の上肢と下肢が麻痺することです。
②片麻痺とは,片方の上肢と下肢が麻痺することです。
③対麻痺とは,両方の上肢または両方の下肢が麻痺することです。
④単麻痺とは,上肢または下肢の一肢が麻痺することです。
麻痺の程度
麻痺の程度については,①高度,②中程度,③軽度の3つに分けられます。
①高度の麻痺とは,障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ,障害のある上肢または下肢の基本動作(上肢においては物を持ち上げて移動させること,下肢においては歩行や立位をとること)ができない程度の麻痺をいいます。
②中程度の麻痺とは,障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,障害のある上肢又は下肢の基本運動にかなりの制限があるものをいいます。
③軽度の麻痺とは,障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており,障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度失われているものをいいます。
認定され得る後遺障害
麻痺が残った場合に認定される可能性のある後遺障害等級は7つあります。
1つ目は,自賠法施行令別表第1・第1級1号です。これは「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,常に介護を要する」場合に認定されます。
具体的には,①高度の四肢麻痺,②中程度の四肢麻痺で,要常時介護状態の場合,③高度の片麻痺であって,要常時介護状態の場合に認定されます。
2つ目は,自賠法施行令別表第1・第2級1号です。これは「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,随時介護を要する」場合に認定されます。
具体的には,①高度の片麻痺,②中程度の四肢麻痺で要随時介護状態の場合に認定されます。
3つ目は,自賠法施行令別表第2・第3級3号です。これは「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができない」場合に認定されます。
具体的には,中程度の四肢麻痺の場合(要介護状態を除く)に認定されます。
4つ目は,自賠法施行令別表第2・第5級2号です。これは「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができない」場合に認定されます。
具体的には,①軽度の対麻痺,②中程度の片麻痺,③高度の単麻痺の場合に認定されます。
5つ目は,自賠法施行令別表第2・第7級4号です。これは「神経系統の機能または精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができない」場合に認定されます。
具体的には,①軽度の片麻痺,②中程度の単麻痺の場合に認定されます。
6つ目は,自賠法施行令別表第2・第9級10号です。これは「神経系統の機能または精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限される」場合に認定されます。
具体的には,軽度の単麻痺の場合に認定されます。
7つ目は,自賠法施行令別表第2・第12級13号です。これは「局部に頑固な神経症状を残す」場合に認定されます。
具体的には,運動性,支持性,巧緻性,速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺が残った場合に認められます。
麻痺が残った場合の後遺障害慰謝料
交通事故によって麻痺が残ってしまった場合,相手方保険会社に請求し得る損害項目は,一般的には,治療費,通院交通費,入院雑費,入通院慰謝料,休業損害,後遺障害慰謝料,逸失利益,将来介護費など,多岐にわたります。
その中でも,後遺障害慰謝料は問題になることが多いです。
後遺障害慰謝料の金額は,自賠責保険で認定される後遺障害等級によって大きく変わります。
「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(いわゆる赤い本)によれば,後遺障害等級1級1号の場合には2800万円,2級1号の場合には2370万円,3級3号の場合には1990万円,5級2号の場合には1400万円,7級4号の場合には1000万円,9級10号の場合には690万円,12級13号の場合には224万円とされています。
このように,認定される後遺障害等級によって後遺障害慰謝料は大きく変わるため,相手方保険会社との示談交渉に入る前に,自賠責保険に適切な等級を認定してもらうことが大事です。
麻痺が残った場合の逸失利益
逸失利益(将来失われる収入に対する賠償)についても,高額になることが多く,問題となりやすいです。
麻痺によってどの程度の労働能力が失われたかどうかは,減収の程度,仕事に対する麻痺の影響,年齢など,具体的な事情を考慮して判断することになります。
もっとも,実務上は,労働能力喪失率表(労働省労働基準局長通牒・昭和32年7月2日付基発第551号)に記載された労働能力喪失率を基準に判断することが多いです。
例えば,後遺障害等級1級から3級の場合は100%,5級の場合は79%,7級の場合は56%,9級の場合は35%,12級の場合は14%の労働能力を喪失すると定められています。
このように,認定される後遺障害等級に応じて,労働能力喪失率も大きく変わるため,適切な逸失利益を獲得するためには,適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。
弁護士法人心に相談
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