死亡事故による慰謝料

死亡事故による慰謝料の種類

 被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料には,大きく分けて2種類あります。

 

 一つ目は,被害者自身の精神的苦痛を補償するための慰謝料(死亡慰謝料)です。

 この慰謝料の支払いを求める権利は,被害者の相続人が相続することになるため,相続人が加害者側に対して行使することになります。

 

 二つ目は,近親者の精神的苦痛を補償するための慰謝料(近親者固有の慰謝料)です。

 近しい関係の親族を亡くした遺族には,大きな精神的苦痛が生じるため,被害者本人の慰謝料とは別に,近親者固有の慰謝料も支払われます。

慰謝料の計算方法

 慰謝料の計算方法には,①自賠責基準,②任意保険基準,③裁判基準の3つがあります。

 

 ①自賠責基準の場合,被害者本人の慰謝料は,400万円と定められています。

 ただし,令和2年3月31日以前に発生した事故の場合には,350万円です。

 

 近親者固有の慰謝料については,請求権者は被害者の父母(養父母を含む),配偶者及び子(養子,認知した子及び胎児を含む)とされ,その額は,請求権者1人の場合には550万円,2人の場合には650万円,3人以上の場合には750万円とされています。

 

 ②任意保険基準の場合,金額は各保険会社によって異なりますが,一般的には自賠責基準よりは高く,裁判基準よりは低い金額となります。

 

 ③裁判基準の場合,「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)によれば,被害者本人の慰謝料と近親者固有の慰謝料を合算した金額として取り扱われます。

 一家の支柱が死亡した場合には2800万円,母親,配偶者が死亡した場合には2500万円,その他の場合には2000万円~2500万円とされています。

死亡慰謝料の増額要素

 赤い本に記載された裁判基準は慰謝料を計算するための一つの目安なので、場合によっては、慰謝料が増額になることがあります。

 

 赤い本によれば、加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合には、慰謝料を増額するとされています。

 

 加害者が公判廷で謝罪したいと述べながら結局謝罪せず、さらに裁判所から示唆を受けたにもかかわらず謝罪をしなかったことが、慰謝料の増額事由とされました(さいたま地判平成24年10月22日)。

 

 加害車両に最大積載量の3.4倍を超える積荷が載せられていたうえ、加害車両に最大積載量を偽るステッカーを貼っていたことが、慰謝料の増額事由とされました(神戸地判平成28年10月27日)。

 

 さらに、被害者が妊娠しており、事故によって胎児も一緒に死亡してしまったことも、慰謝料の増額事由とされました(大阪地判平成18年2月23日)。

慰謝料の分配方法

 被害者の損害賠償請求権を相続した相続人が複数いる場合,加害者側から獲得した慰謝料の配分方法に注意が必要です。

 

 被害者本人の慰謝料は,基本的には法定相続分に従って配分されます。

 しかし,近親者固有の慰謝料については,その近親者が受け取ることになります。

 

 例えば,被害者本人の慰謝料が2500万円,配偶者の慰謝料が200万円,子の慰謝料が150万円である場合には,配偶者の慰謝料と子の慰謝料は,それぞれが受け取り,被害者本人の慰謝料2500万円は,配偶者と子が法定相続分に従って受け取ることになります。

 

 もっとも,示談段階では慰謝料の内訳が明示されないことも少なくないため,示談をした後に,内訳を巡って親族同士で揉めてしまうことがあります。

 そうならないよう,あらかじめ弁護士に相談するのが良いでしょう。

弁護士法人心に相談

 死亡事故が起きてしまった場合,遺族は大切なご家族を亡くし,精神的に大きな苦痛を被っておられるかと思います。

 そのような状況の中で,相手方保険会社との対応もしなければならないのは,負担が大きいです。

 弁護士に依頼すれば,相手方保険会社とのやり取りは,すべて弁護士が行うことになるので,ご遺族の負担を軽減することができます。

 

 当法人には,死亡事故などの重大案件を解決してきた弁護士が多数在籍しておりますので,交通事故によってご家族を亡くされてしまった方は,ぜひ一度,お問い合わせください。

 

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