遷延性意識障害

遷延性意識障害の苦しみ

 交通事故などで頭部に強い衝撃を受けることや,脳梗塞・脳出血などの病気によって,脳が壊死・損傷すると,いわゆる植物状態になってしまうことがあります。

 このような状態のことを,遷延性意識障害といいます。

 遷延性意識障害は,交通事故による後遺障害の中でも,最も重い後遺障害の一つです。

 残念ながら,現在の医学上,遷延性意識障害の有効な治療手段は確立されていません。

 そのため,遷延性意識障害になってしまった被害者の方だけでなく,介護を行うご家族にも,長期にわたって大きな精神的苦痛や経済的負担が伴います。

後見申立の必要性

 遷延性意識障害を負った被害者本人には,意思能力がないため,被害者に代わって後遺障害の認定申請,相手方保険会社との示談交渉,訴訟などの手続きをする成年後見人を選任する必要があります。

 成年後見人は,家庭裁判所に申し立てることにより,家庭裁判所から選任されることになります。

 成年後見人の選任は,賠償金の請求だけでなく,日常生活における契約などあらゆる場面で必要となるため,早めに申立を行う必要があります。

 当法人では,成年後見の申立手続もサポートしております。

認定される後遺障害等級

 遷延性意識障害と自賠責保険から判断された場合には,「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」として,介護を要する後遺障害等級第1級と認定されることが通常です。

問題となることが多い損害項目

 遷延性意識障害となってしまった場合には,特に①逸失利益,②将来介護費が問題となることが多いです。

 

 ①逸失利益とは,退職するまでに得られたはずの収入を補償するものです。

 遷延性意識障害になると労働能力を100%喪失するため,事故前の収入や年齢によっては,逸失利益が極めて高額になることがあります。

 

 遷延性意識障害については,相手方保険会社から「遷延性意識障害になった人は,健康な人に比べて生活費が掛からないから,健康な人より節約できたであろう生活費相当額を逸失利益から控除すべきである」との主張がされることがあります。

 

 生活費相当額の控除は認めないと判断した裁判例もありますが,一方で,生活費相当額の控除を認めた裁判例も存在します。

 

 結局のところ,遷延性意識障害であっても生活費が掛かることをどこまで主張,立証できるかが,ポイントとなります。

 

 ②将来介護費とは,遷延性意識障害などで一人では日常生活の動作ができなくなり,将来にわたって介護を要する状態になったしまった際の,介護費を補償するものです。

 

 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)によれば,将来介護費の日額について,職業付添人については実費,近親者については日額8000円を基準とするとされています。

 

 もっとも,障害の程度,内容によって介護の必要性は変わるため,介護の必要性を個別具体的に主張,立証していくことが必要となります。

弁護士法人心に相談

 当法人には,遷延性意識障害などの重度後遺障害の案件を解決してきた弁護士が多数在籍しております。

 交通事故でお困りの方は,お気軽にお問い合わせください。

 

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