むちうちによる後遺障害
むちうちでも後遺障害が認定されるのか
頚椎捻挫,腰椎捻挫などの,いわゆるむちうちになり,通院治療を受けたけれども,どうしても痛みや痺れが残ってしまう場合があります。
そのような場合には,自賠責保険から後遺障害等級14級9号と認定される可能性があります。
どのような場合に14級9号は認定されるのか
後遺障害等級14級9号は「局部に神経症状を残す」場合に認定されます。
「局部に神経症状を残す」とは,「労働には通常差し支えないが,医学的に説明可能な神経系統又は,精神の障害を残す所見があると認められるもの」をいいます。
つまり,レントゲン画像やMRI画像などによって,痛みや痺れが残っていることを医学的に証明することまではできないけれども,事故状況や治療経過などを総合的に考慮して,痛みや痺れが残っていることを医学的に説明できる場合には,14級9号が認定されます。
14級9号が認定された場合の賠償金
後遺障害等級14級9号が認定されると,後遺障害慰謝料,逸失利益が通常支払われます。
後遺障害慰謝料と逸失利益は,後遺障害が認定されない場合には通常支払われません。
後遺障害慰謝料と逸失利益の金額は,認定される後遺障害等級に応じて変わります。
14級9号が認定された場合の後遺障害慰謝料は,裁判所の基準では110万円です。
逸失利益は,事故前年の所得金額によって変わるので一概には言えませんが,おおむね65万円から100万円程度になることが多いです。
14級9号に至らない後遺症が残った場合
自賠責保険からは後遺障害には該当しないと判断されてしまったけれども、痛みや痺れといった後遺症が残存した場合、それに応じた後遺症慰謝料が認められることがあります。
例えば、裁判例の中には、14級には該当しない程度の身体(首、肩、腰)の痛み及び精神症状(不安、不眠、交通状況による不安と回避等)の被害者につき、各症状は症状固定後もなお残存するから後遺障害だとし、症状経過(治療期間約8か月20日)や程度等から、後遺障害分50万円を認めたものがあります(金沢地判平成30年7月5日自保ジ2040.57)。
もっとも、他覚的所見のない打撲、捻挫については、痛みや痺れが残存していることの証明が難しいため、後遺障害が非該当の場合には、痛みや痺れが残存していたとしても、それに応じた後遺症慰謝料が認められることは少ないというのが現状です。
後遺障害等級14級9号を獲得するための注意点
後遺障害等級14級9号を獲得するためには,以下の3つの注意点を守ることが特に大事です。
①早いタイミングでMRI画像を撮影すること
症状に整合するMRI画像が残っていると,後遺障害等級14級9号が認定されやすいです。
例えば,腰部痛が残ってしまった場合に,MRI画像で腰椎椎間板膨隆が認められると,腰部に14級9号が認定される可能性が高まります。
むち打ちの場合にはMRI画像を撮影しなくても良いと考えている医師は多いですが,撮影をしなければ,後遺障害認定において不利になる可能性があります。
そのため,痛み,痺れが強い場合には,早いタイミングでMRI画像を撮影したいと医師に相談することをお勧めします。
②整形外科への通院を継続すること
事故当日に通院しなかった場合や,通院頻度が少ない場合には,症状が軽微であると判断され
,後遺障害が認定されにくくなります。
もちろん,事故当日が休日であったり,仕事が忙しくてなかなか通院できないといった事情は良くあります。
しかし,後遺障害の審査機関である自賠責調査事務所は,通院日や通院頻度などから機械的に後遺障害の有無を判断する傾向にあるため,そのような事情はほとんど考慮されません。
痛みや痺れが強い場合には,我慢せず,しっかりと整形外科に通院することをお勧めします。
③症状をしっかり医師に伝えること
医師のカルテに書かれたことは,有利にも不利にも,被害者の方にとって決定的な証拠になります。
例えば,事故当初のカルテに頚部痛と記載されていなければ,事故後1か月後のカルテに頚部痛と記載されたとしても,事故当初に頚部痛はなかったと判断されてしまいます。
そうすると,頚部痛の一貫性がないことを理由に,後遺障害に該当しないと判断されてしまいます。
そのため,気になる症状は,漏れなく,医師に伝えることをお勧めします。