死亡事故による逸失利益
死亡事故による逸失利益は高額
交通事故により,有職者がお亡くなりになった場合,事故がなければ得られたであろう将来の収入を失うことになってしまいます。
その将来得られたであろう収入のことを逸失利益といい,これも損害賠償の対象とされます。
特に,働き盛りの方がお亡くなりになった場合には,逸失利益の額は大きくなります。
逸失利益の計算方法
死亡事故による逸失利益は,「基礎収入 × (1-生活費控除率) ×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」によって計算します。
具体的な計算は,以下のとおりに行います。
例えば,年収600万円の30歳独身男性がお亡くなりになった場合,逸失利益は,6650万1600円となります。
計算式:基礎収入600万円 ×(1-生活費控除率0.5)×67歳まで37年分のライプニッツ係数22.1672=6650万1600円)。
基礎収入の決め方
基礎収入とは,事故当時,被害者の得ていた年収のことです。
基礎収入をどのように決めるかは,①給与所得者,②個人事業主,③会社役員,④家事従事者,⑤学生,⑥その他,によって異なります。
①給与所得者の場合,事故前年の源泉徴収票に記載された支払金額を基礎収入にするのが通常です。
②個人事業主の場合,事故前年の確定申告書に記載された所得金額と固定費を合計した金額を,基礎収入にするのが通常です。
③会社役員の場合,役員報酬のうち労務提供対価部分が基礎収入とされます。
労務提供対価部分がいくらなのかは,会社規模,役員の地位,職務内容,稼働状況などによって総合的に判断することになります。
例えば,一人会社のような場合には,役員報酬の大半が労務提供に対する対価と認められやすいです。
これに対して,名目的な役員であり,現実的に役員としての職務をしていないような場合には,役員報酬のうち労務提供に対する対価は少ないと判断されやすいです。
④家事従事者の場合,賃金センサスの女性労働者の平均賃金額を基礎収入とするのが通常です。
⑤学生の場合,賃金センサスをもとに基礎収入を算定します。
大学生の場合には,大卒労働者の平均賃金を基礎収入にします。
小,中,高校生の場合には,全学歴の平均賃金を基礎収入にするのが一般的です。
⑥その他,無職者については,原則として逸失利益は認められません。
ただし,将来職に就く蓋然性が高いと証明できれば,逸失利益が認められることもあります。
生活費控除率とは
生活費控除率とは,収入のうち被害者が必要としたであろう生活費の割合のことです。
被害者が死亡すると逸失利益が発生する一方,今後の生活費も掛からなくなります。
そのため,死亡事故による逸失利益の計算においては,生活費相当額が控除されることになります。
実際に収入に占める生活費の割合がいくらだったのか,把握することは困難であるため,実務上は,損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)にしたがって,生活費控除率を判断します。
赤い本によれば,被害者が一家の支柱であって,被扶養者が1人の場合には40%,被扶養者が2人以上の場合には30%とされています。
被害者が女性の場合には30%,男性の場合には50%とされています。
労働能力喪失期間の決め方
労働能力喪失期間は,一般的には,死亡した年齢から67歳までの期間とされます。
67歳以上の有職者が死亡した場合には,死亡した年齢と平均余命の半分の期間が,労働能力喪失期間とされるのが通常です。
弁護士法人心への相談
死亡による逸失利益の計算においては,考慮すべき要素が多いため,どのように計算するかによって,金額が大きく変わります。
相手方保険会社の提案してきた逸失利益が妥当かどうか,判断が付かないことも多いかと思いますので,示談前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
当法人には交通事故に強い弁護士が多数在籍しておりますので,死亡事故でお困りの方は,お気軽にお問い合わせください。