高次脳機能障害

高次脳機能障害は認定される等級が大事

 高次脳機能障害の場合,自賠責保険から後遺障害等級1級1号,2級1号,3級3号,5級2号,7級4号,9級10号が認定される可能性があります。

 どの等級が認定されるかによって,被害者の方の受け取る後遺障害慰謝料などの賠償金額が大きく変わります。

 例えば,1級1号が認定された場合の後遺障害慰謝料は,裁判所基準で2800万円ですが,9級10号が認定された場合の後遺障害慰謝料は,裁判所基準で690万円となります。

 そのため,高次脳機能障害の場合には,認定される等級が大事になります。

高次脳機能障害によって生じる症状

 高次脳機能障害になると,遂行機能障害(自分で計画を立てて物事を実行できない,人に指示してもらわなければ何もできないなど),記憶障害(新しいことを覚えられない,物の置き場を忘れるなど),流暢性失語(言葉を思い出すのに時間が掛かるなど),聴覚失認(音を認識できない),視覚失認(見えているものを認識できない),相貌失認(人の顔を見ても誰か認識できない)といった症状が出現します。

 

 このような症状は,外見上目立たないですし,本人自身も障害を認識できていないことが多いです。

 さらに,診察の場面よりも,職場,学校,買い物,交通機関の利用などの日常生活の場面で出現しやすいです。

 

 そのため,被害者のご家族が注意深く観察していないと,高次脳機能障害であることが,医師から見落とされてしまうことは多くあります。

高次脳機能障害の認定ポイント

 高次脳機能障害と認定されるためには,以下の3つのポイントが重要です。

 ⑴まず,頭部外傷後の意識障害が存在していることです。

 頭部外傷後に重い意識障害が6時間以上継続していることや,軽い意識障害が1週間以上続いていることが重要視されています。

 ⑵次に,頭部画像上,初診時の脳外傷が明らかで,3~4か月で脳室拡大・脳委縮が確認されることです。

 この時期に画像検査をしっかり行っていないと,それだけで高次脳機能障害が認定されなくなるおそれが出てきます。

 ⑶最後が,機能障害が残存したことが検査結果・資料から明らかであることです。 

 検査については,専門家が様々な手法を用いて行い,主に意思疎通能力、問題解決能力、遂行能力、社会行動能力の4つを判断します。

 また,家族や身近な人達が,被害者の日常生活の状況をまとめた報告書を作成し,これも機能障害が残存したことを証明するための資料とします。

高次脳機能障害で請求できる損害項目

 相手方保険会社に請求できる項目には,大きく分けて①積極損害,②消極損害,③慰謝料の3つがあります。

 

 積極損害には,通常,治療費,入院雑費,将来介護費などが含まれます。

 特に金額が大きく,問題になることが多いのが将来介護費です。

 将来介護費についてさらに詳しく知りたい方はこちらへ▷

 

 消極損害には,休業損害,逸失利益などが含まれます。

 逸失利益は将来失われる所得を補償するものであり,金額が大きくなることが多いため,注意が必要です。

逸失利益についてさらに詳しく知りたい方はこちらへ▷

 

 慰謝料には,入通院慰謝料,後遺障害慰謝料などが含まれます。

 障害の程度によっては,近親者固有の慰謝料も賠償の対象となります。

慰謝料についてさらに詳しく知りたい方はこちらへ▷

高次脳機能障害と裁判

 高次脳機能障害については,裁判において症状の程度が争点になることが多いです。

 裁判をした結果,自賠責保険で認定された後遺障害等級よりも,低い等級を裁判所が認定することもあります。

 

 そのような認定をされる原因の一つが,病院のカルテの記載です。

 自賠責保険に後遺障害認定申請をする際には,カルテまでは提出しないことが多いですが,裁判となると,ほとんどの場合でカルテが提出されます。

 カルテに不利な記載がされていると,それが原因で,裁判所から低い後遺障害等級が認定されてしまうことがあります。

 

 そのような事態にならないためには,通院の初期段階から,適切に主治医に症状を伝えることが大事です。

公的支援制度

 高次脳機能障害になってしまった方は,以下の公的支援制度を利用できる可能性があります。

 

 ①精神障害者保健福祉手帳

 高次脳機能障害などの精神疾患により,長期にわたり日常生活又は社会生活への制約が生じてしまった方を対象として,国が税金の控除・免除,公共料金の割引などの支援をする制度です。

 

 ②身体障害者手帳

 手足の麻痺や音声・言語障害があり,厚生労働省の定めた身体障害者程度等級表に該当する方を対象として,国が税金の控除・免除,公共料金の割引などの支援をする制度です。

 

 ③療育手帳

 発症(受傷)が18歳未満で,自治体が指定する機関において知的障害と判定された方を対象として,各自治体が特別児童扶養手当の支給,税金の控除・免除などの支援をする制度です。ただし,各自治自体により対象者,支援内容は異なります。

弁護士を選ぶ際の注意点

 高次脳機能障害は,仕事や日常生活で大きな支障を生じさせる一方,傍目から見て異常があるように思いにくいため,症状の重さが第三者に伝わりにくいです。

 

 高次脳機能障害で適切な等級を受けるためには,適切な検査を受け,適切な資料を自賠責保険に提出する必要があります。

 

 被害者の日常生活状況報告書をご家族に記載してもらうときには,記載内容,分量が適切か,細かくチェックする必要があります。

 

 しかしながら,高次脳機能障害は発生件数が多くはなく,扱ったことのない弁護士が少なくないため,適切な対応ができない弁護士も中にはいます。

 

 そのため,弁護士に依頼する場合には,その弁護士がどの程度高次脳機能障害を取り扱ってきたのか,本当に詳しいのか,しっかりと確認した方が良いです。

弁護士法人心への相談

 当法人には,高次脳機能障害を数多く扱った経験のある弁護士に加え,後遺障害認定機関の元職員も在籍しております。

 さらに,整形外科専門医が顧問をしているため,医学的な知見に基づく資料を作成することもできます。

 交通事故に関しては,電話相談,テレビ電話相談も承っているため,長崎の方もお気軽にご相談いただけます。

 長崎にお住まいの方で,高次脳機能障害に強い弁護士をお探しの方は,ぜひ当法人にご連絡をください。

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